【建築×ビジネス】東横インの建物・内装をビジネス的観点から考察します

この記事では有名チェーンビジネスホテルである東横インの建物・内装・外観などの建築的要素がビジネスの収益を上げるためにどのような工夫・設計をしているのかを自分なりに考察していきます。

こんにちは、マーティンです。

本記事は、ビジネス×建築シリーズの記念すべき初回記事となります。

お題は日本人であれば知らない人はいないであろう超有名ホテルの東横インです。

国内ではトップの客室数を誇る最大のホテルビジネスゆえに、現場のオペレーションのシステムはもちろん、建築的なところも徹底的に効率化しているのは間違いないでしょう。

東横インを選んだのはたまたま新宿の紀伊国屋で最後に紹介する参考文献を見つけたからなのですが、初回にふさわしい対象であるとも感じます。

というわけで、東横イン建築のビジネス的要素を考察していきたいと思います。

東横インの建物・内装をビジネス的観点から考察します

全ての店舗で同じ間取りの部屋

泊まったことがある方であればご存知の場合も多いかと思いますが、東横インの最大の特徴はどの地域のどの店舗で泊まっても、ほぼ同じ間取りとデザインの部屋であることです。加えて家具の配置やフロントなどの共用スペースまで同じ間取りと大きさです。

これはオフィシャルでも、第二の家としてどの地域でも同じだからこその安心感を宿泊者へ産むことができるというコンセプトと説明しています。これは海外でも同様で、僕は以前にフィリピンとドイツの東横インに宿泊しました。

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異国の地だからこそ、その安心感はより有り難く感じます。フィリピンの場合は南国であり、基本的にシャワーだけのホテルが多いので、ユニットバスに入れるだけでも感動したものです。

ではこの同じ間取りとデザインということで、宿泊者にはどこでも同じ安心感というアドバンテージがあるわけですが、ビジネスやコスト的すなわち運営側にはどういうメリットがあるのかを考察します。

設計費が圧倒的にかからない

建物の土地の広さが決まれば、設計はほぼ決まったようなものです。図面のほとんどの部分が他の物件からのコピーペーストで事済むのではないでしょうか。

設計費的な観点で言うと、これはめちゃくちゃ低コストで素晴らしいですね。一般的に建築士はその土地だとか周辺環境だとか非常に多用な要素を考慮してひとつの建物を設計します。これはこれで良い設計なのですが圧倒的に時間がかかります。時間がかかるということはそれだけ人件費が発生するので、テンプレート化するのはやはり効率的ですね。

また東横インは社内に設計部があるようなので、かなり少人数でまわしていると推測します。

施工もやりやすい

設計と同様に施工も非常にやりやすいです。施工管理は社内でやっているとして、実際に施工する下請けもおそらく地域ごとに同じ会社を使っている可能性が高いです。

何度も同じものを作っていれば、慣れてきますし施工スピードも上がっていきます。ですのでまったく新しいものをいちから作るよりも、施工費はある程度ですが浮かせることができるでしょう。また材料とかも余れば別店舗で使いまわせますね。非常に理にかなっています。

 

このように部屋が同じということは、宿泊者の安心感を産むという表向きに大きなメリットがありますが、建築的なことでいうとコストダウンにも繋がるビジネス的な良いアイディアです。リーズナブルな宿泊料金の実現にも繋がっているはずです。

補修費用を浮かせる工夫

よほど大きな補修でなければ店舗のスタッフで行なっているそうです。半日で終わるちょっとした補修でも、工務店に外注すれば数万円はいってしまいますからね。ちょっとした金額ですが、自分たちである程度できれば大きな経費削減に繋がります。

また上で紹介したように作りがまったく同じなので、補修方法とかもマニュアル化しやすいです。

この補修について、参考文献に掲載されていた工夫を紹介&解説します。

タイルカーペットを使用

普通のカーペットと違うところは450mm×450mmとかの切り離しサイズであることです。
新築する時は、切り離しタイプの方が手間がかかるため施工費は若干高く付きますが、ピンポイントで取り替え補修ができるので、メンテナンスまで考えるとコスパは良いですね。

1枚が大きいタイプでも部分補修はできますが、ジョイントが目立ちます。それならば最初からタイルみたいになっていた方が良いです。これは糊付けするだけなので、やり方を覚えてしまえば器用なスタッフなら全然できるレベルでしょう。

柄ありのクロス(壁紙)を使用

これは普段から施工している僕から見ても有難いですね。
柄なしの壁だとちょっと机とかをぶつけるだけでかなり目立つ傷になります。ジョイントが目立つため補修もそこ1面やらないといけなくなるケースも多いです。

一方で柄有りだと傷が柄と同化して見えるため目立ちませんし、部分補修もしやすいです。長く使っていくことを考えると、施主的にもなるべく柄あり系を選んだ方がいいでしょう。

腰見切りを入れる

東横インの客室には腰高に見切りが入っていますが、これも補修のコストダウンを考慮してのデザインだと言えます。

ホテルなのでスーツケースとかを壁にぶつけたりする事が多く、腰高以下の高さの壁は傷みやすいです。補修する時に見切りが無いと、床から天井までの1面を代えないといけなくなりますが、見切りがあることでそこで区切れて半分で済みます。

廊下にも腰見切りは入っていますね。これも同様の理由でしょう。
廊下とかパブリックスペースの腰下は材料を変えて、長尺シートとかで耐久性・耐水性を高いものにしても良いかなとも思いますが。

 

あと本には特に記述はなかったですが、東横インの客室には天井見切りも必ず入っていますね。理由には腰見切りと同じ色を使っていることからデザインの統一感がひとつ。
腰上の壁は下に比べたら傷みにくいですが、見切りがないと壁一面張り替えた時に天井との境目がおかしくなるのでそういう対策もあるでしょう。同じ製品を使っても経年による変色や劣化は出てきますので。

社内建築士が増えそう

自分たちでも補修できるというのはメンテナンスや費用の観点から言うと、とても良いことですが、建設会社的には仕事が減ってしまうので微妙なところ。こうした矛盾があるため、今後は東横インのように社内に建築士などを抱える企業は増えていくのではないでしょうか。

ある程度の規模と仕事が無ければ、お抱えを雇うのは割に合わないかもしれませんが、今後はフリーランスとかでプロジェクト単位で働くスタイルも考えられるので一般化する可能性は高いですね。僕も同じ会社とか同じ場所にずっといると飽きてしまうので、そういうプロジェクト単位の働き方の方が好みだったりします。

外観について

東横インの外観(ファサード)は国内であればほぼこのスタイル。

①1階→茶・オレンジのレンガ調
②2〜4階→濃い茶色
③中間→薄い茶色
④上階(1-3階分程度)→白

ちなみに海外だとけっこう異なります。

②と④は店舗によって微妙に階数に違いがあり、何か法則があるのか気になるところ・・・。

このデザインに行き着いた理由は、「その町の景観に馴染む」ということだそうです。

新しい店舗でその度に外観をデザインすると、その都度大きな手間がかかります。ですのでこの外観もテンプレート化してしまったと言えます。しかし町の景観は当然その町ごとに異なります。この茶色と白ベースのシンプルなデザインが、比較的どこでも馴染めるという結論に至ったのでしょう。

店舗ビジネスの場合、建物や入り口の外観はその店舗の広告とも言え、お客さんを呼び込むために非常に重要な要素です。

しかし、ホテルの場合はそもそも事前に予約するので飲食店のように思い付きで入ることは少ないですし、東横インの場合は看板がとにかく目立ちますし、駅からも立地が良いのですぐに存在を認識できます。ですので外観にはお金と手間をそこまでかけないと割り切っているように感じます。

一般的に建築をやっている側からすると、全て同じ外観なんて面白みがないという話になるわけですが、僕はビジネス的に理にかなったデザインであると思います。

まとめ

とりあえず初回の東横インの考察記事はここまでとします。

王道のチェーン型ホテルというかそのパイオニア的な存在である東横インには、利益確保や経費削減するための様々な工夫がありました。おそらくこの記事で書いていないところでもまだまだ工夫があるでしょう。

そして自分で書いていて、内装デザインや材料選定などの要素は、ビジネスの経費とかを考える上でも非常に重要であるとも改めて実感できました。

僕は旅行が大好きで、色んなホテルに泊まるのも大好きです(AgodaはVIP会員になりました!)

ですので、今後も様々なホテルに泊まってレポートを上げていきたいと思います。

▽参考文献