フィリピンのスラム街に実際に泊まってみた。

先日の4連休を使ってボホールに行ってきました。今回の旅行では3泊四日というスケジュールでしたが、チョコレートヒルズをはじめとする観光地という観光地にはまったく行かずに、ローカルな場所をひたすら訪ねました。 そして最初に紹介するのは、海の上で暮らす人々です。この地域では土地という概念がないため、賃貸料などを支払わずとも勝手に家を建てられるという、いわゆるフィリピンでスラム街と呼ばれる場所です。(フィリピンのスラムにはこのほかにもいくつか種類があります)

海の上の集落

まずは表題の写真です。驚くべきことに海の上に木材と竹で柱を組んで家を建てています。沢山の家が集まってそこはまるで集落のよう。フィリピンではないですが、以前少数民族の家々を集めた写真集でこのような家を見たことがあって、ずっと実際に行ってみたいと思っていました。意外な形ですが夢が叶ったわけです。写真を撮りまくっていたら町の方まで、「写真をめっちゃ頑張って撮ってるジャパニーズがいるぞ」と話題になっていました。

さらに僕の知り合いの姉の一家がここに住んでいるということで紹介してもらい、実際に一泊してきました。

場所はボホール島北部のタリボンという田舎町。こちらの海岸沿いに集落ができています。

写真と解説をいくつか。

家と家を繋ぐ通路も全て木材と竹で手作りです。宙に浮いた生活空間がここにはあります。材料は見たところ、家の建設には使えないような形状の材料、家を解体した時に出た廃材のようなものが多かったです。また、子供たちにとってはここが遊び場のひとつ。グラグラして非常に移動が大変でしたが、子供達はもうこなれたものでスイスイと走っていきます。

住空間下部分の柱はこのようになっています。縦横の材に加えて斜材を含めた非常にシンプルな構造です。メインの柱が竹でできているところもあり、日本の建築では非常に精巧な構造力学を勉強させられるわけですが、こんな単純な構造でも人が住む家を支えられることに驚きました。

こちらは漁業用の船が集まる桟橋の役割を果たす建物。周辺の中では一番大きな建築でした。

上の写真の建物から伸びる長めの桟橋。

ここからは泊めていただいた家内部の写真。外から見た時はまさか電化製品があるなんて想像出来ないですが、テレビと大きめの冷蔵庫までありました。しかも家には電気・水道が通っています。電化製品はここにあるものくらいでした。しかし、フィリピンの家では冷蔵庫が無い家が多く、このサイズの冷蔵庫があるのは以外と珍しいことです。

厳密には違法で建てられた建物たちですがインフラがあるってことは黙認されているのでしょうか?街中にもう家を建てて人が住める充分なスペースが無いという都市的な問題でもあるためかと思われます。

こちらはキッチンです。ガスは使っておらず、薪で火をおこして調理します。ちなみに食事は、海が近いこともあり魚介類が豊富です。またボホールはとにかく自然が豊か。船を降りた時の最初の感想は「大自然」です。よって野菜等の食べ物もかなり豊富。ここの家主の実家がお米農家なので、米はタダで実家から貰えるそうで、あとはオカズをなんか1品買うか作れば済むとのこと。食べ物には困らなそうですね。

典型的な料理はご飯・魚料理・野菜料理といった感じ。かなり健康的ですね。

驚くことに水上で豚の養殖も行っています。合計8匹くらいいました。ある程度育った段階でマーケットで売りにだすそうです。臭いはそこまで気にならないですが、とにかくうるさいです。売りに出される時の豚の声は凄まじいです。この世の終わりみたいな声を出します。まあ実際には確かに終わりなのですが・・・。(生後4ヶ月の段階で一匹2〜3000ペソ程度)また、豚の他に鶏を飼っているところも多かったです。

朝から周りで動物達が騒がしいので5時過ぎには目が覚めてしまいます汗。

この植物はネギです。簡単な菜園も行っているようです。意外に食べ物に関してはサステイナブルというか。外食する金銭的な余裕がないとも思われます。

トイレは撮り忘れましたが、ただ単に穴が空いていて下に落とすだけというシンプルなスタイル。そして満潮時に海が綺麗に洗い流してくれるわけです。ザ・自然のトイレ。



滞在してみて感じたこと

さて、ここまでは写真とその解説を書いてきましたが、ここからは実際に滞在して思ったこと、考えさせられたことを書きたいと思います。

まず、何故あなたたちはこの場所に住んでいるのか?と聞きました。質問する前は、漁業等の独特な仕事によりあえてこの場所を選んでいると思っていました。もちろん彼らの中には漁業を仕事とする人もいます。しかし大半の人が町で普通に従業員として働いているのです。質問の答えは、「誰も好きでここに住んでいるわけではない」でした。現実的には町の部分に仕事が集中し、学校等の公共施設も当然、町中心部に集中しています。あの写真の場所は海沿いですが、非常に町と近い地域でもありました。さらに海の上に家を建てているため、土地代が必要なく自由に建てられるそうです。そう、これらの地域は人口増加と過密によるスラム街だったのです。

質問の答えを聞き最終的にこの結論に辿り着いた時、かなりショックを受けました。物珍しげに写真をバンバン撮っていた自分を恥ずかしく感じました。現地の人も、人事だと思って、とあまり良い気がしなかった人がいるかもしれません。

そして上の冷蔵庫がある居間で一晩過ごしたのですが、その環境は想像を上回る過酷さ。床にマットを敷いただけなので、かなり体が痛い。また家畜もそこら中にいるため早朝4、5時あたりからかなりやかましく、夜中には僕の上をネズミが走りまわっていました。さらに通路部分の写真を見るとわかる通り、住宅がかなり過密しています。壁は竹製で防音性は皆無、人が歩く振動も直に家の中まで伝わってきます。この環境の中で、沢山の家族がひとつの部屋に雑魚寝しています。快適な睡眠とはかけ離れた環境です。

一番の問題は災害時だといいます。容易に想像出来ますが、海辺のため台風時はシャレにならない被害になるでしょう。住人は事前に大事な物を持って、町の体育館に避難するそうです。いつでも災害時に最もダメージを受けるのは、ろくに地球温暖化に貢献していない最も弱い立場の人達です。地球温暖化立役者である我々先進国民は、いつでもコンクリートの中で安全快適に過ごしています。

それにしても、私たちの社会は知れば知るほど問題だらけで、自分の無力さを思い知らされます。もし滞在していなかったら、「おーすごい、かっこいい建物!」で終わっていたと思います。目線を揃えて一緒に過ごし話をすることで、見えてくるものはまったく違うのですね。

最後にこんなところでもいつも通り、現地の人たちの笑顔とおもてなしに勇気付けられてしまいました。この度の滞在でお世話になった方々にお礼申し上げます。

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